借金と事業承継と相続、そして今の仕事

私の実家は富山県富山市にあります。実家は造園業をやっていました。父は元々国鉄に努めていたのですが、少し退職を前倒しする形で造園業を始めました。1980年位のことでした。

事業は順調に行っているように見えたのですが、父が高齢でガンを患い、いよいよ事業をどうしようかという話し合いになったタイミングで、大きな借金があることを知りました。2004年位のことです。郵便で長男だった私に、父がお詫びの言葉と借入の内容が記載された手紙を送ってきたのでした。借金は土地を担保にしたものでしたが、金利年14.5%位の高利のものでした。毎月決まった日に金利分を取りに金融業者が来ていたようです。母は近所の病院で助手として働いていたんですが、その給与も取られてしまっていたとのことでした。母の話によると趣味の延長でやっていたこともあり、採算を気にしないで植木など仕入れをしていたようです。

私もそんな話は寝耳に水でしたし、当時既に東京に出てきていて家庭があり子供も小さかったこともあり、怒ったことを覚えています。

父はその後すぐに亡くなりました。手紙に書かれていない借金があることが分かり、相続は放棄も含めて慎重に対応しました。結局新たな借金は見つからず、生命保険がおりたことでかなり負担が減りました。若干の現金は持ち出しにはなりましたが、土地や建物を放棄するまでではなく単純相続を行いました。今となっては相談できず悩んでいた父に、怒ってしまい申し訳なく思っています。もっと早く話を聞いていればよかった思っています。

今自分は事業承継や遺言相続を支援する仕事を行っています。大きな借入金があったり債務超過になっている企業の経営者が、事業承継の話を切り出しにくい状況を目の当たりにしています。父のように誰にも相談できずに苦しんでいる中小企業や個人事業主の経営者の方に役立てればと思います。

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齊藤 肇

長年の外資系IT企業で培ったITシステム導入に関する幅広い経験と知識が強みです。またプロジェクトのマネージメント経験は豊富です。 現在は補助金支援を主に、IT導入、遺言・相続、会社設立、事業承継、企業経営全般まで幅広く中小企業支援を行っています。 主な著書に「老舗の強み」(共著:同友館)、「新世紀を勝ち抜く卸売業の情報システム」(共著:経営情報出版)、「ビジネス能力(3級)合格完全対策」(共著:経林書房)などがあります。